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マラリア撲滅のためにできることとは?            ―水野達男氏インタビュー③―

Malaria No More Japan専務理事の水野達男さんへのインタビュー・レポートの第3回目となりました。ラストは、ここまで詳しくマラリア撲滅のための活動について語ってくださった水野さんご自身の、活動への強い信念をお聞きしました。

~水野さんのプロフィール~

5.NPOの活動について

Q.ネット上で「アフリカ・蚊帳・マラリア」と検索すると、意外にも様々な団体がヒットしました。そのなかでも Malaria No More Japanの特徴について教えてください。

そうですね、力を入れているのは日本政府に対する政策提言、つまりマラリア対策への継続的な資金提供への影響力は一番強いと思いますね。あとは、民間企業に対して、「マラリアに力を入れよう~」という啓発活動や新しい薬やツールを開発・販売してほしいという働きかけも長く・広く続けて行っています。

一方でアフリカ・アジアの現地での支援、実際のお金の運用についても工夫をしていますよ。つまり、支援の道を見えるように、どこでどうお金が使われたのかがはっきり解るように工夫、僕たちのHPでは、支援先の詳細を載せるようにしています。本当にね、我々の支援は水が海に一滴垂れているような…そんな規模だけに工夫が必要、そんな感覚なんですよ。でもそこにも価値があります。

Q.企業との連携を生かした何か新しい取り組みはありますか?

最近の話だと、・・・・・国内のとあるペイント会社に、殺虫剤入りの塗料を作ってくれるように働きかけています。というのもアフリカでは、家の外、中の壁にペイントで色付けしたいというニーズをあるように思う、喜んで使うと思うのです。なので、そのペイントに殺虫剤を含ませてしまえば、蚊帳の利用だけでなく、マラリアを媒介する蚊を屋内・外で防除できますよね。あとは、ドローンの会社ならば、ドローンを使って無人で、ボウフラ防虫剤を効果的に広範囲に運び、散布できる。そこにある水溜りに居る蚊の幼虫、ボウフラに防虫剤を投与できるし、そこに産卵に来た蚊にもその薬剤を付着させることによって、今度は蚊が防虫剤をさらに広範囲に運ぶというドミノ効果を発揮させることも考えています。 新型の防虫剤なら薬剤の散布量も少なく、軽いので、人や動物などの哺乳類には安全に、ドローンで運べます。こういうものは すべてアイディアですよね! 僕はメーカー・企業出身なので メーカーならでは工夫を・・・(笑)。

6.活動を積み重ねる意味

Malaria No More Japanは、2016年5月23日から2週間、感染症対策確立の重要性を訴えるために、東京メトロの日比谷線にてポスターを掲載していました。この期間は、G7伊勢・志摩サミットが開催されていました。

Q. この広告はどうのような趣旨で行ったのですか?実際に寄付が増えた、というような費用対効果はどのくらいありましたか?

直接的な広告の費用対効果なんて全くないです(笑)。ユニセフさんや大きな団体は費用対効果があると思うけれど、僕らみたいな小さな団体はないですよ。むしろこの活動の目的は、蚊がこれだけ人々を殺しています、という認知や、社会課題解決のために日本ではこういう取り組みが行われていますということをG7サミット中に告知していくことです。SNSと連携して、メデイアがこのような活動を取り上げてくれる、広告が引き起こす2次的な効果を狙っています。今後はこういう活動をどんどん行っていこうと思っています。

Q.なるほど…やはり資金集めは大変ですか?

個人からお金を集めるのは、労力のわりには集まらないです。特に日本はね。なので、民間企業からのご支援が中心。それらのお金を効果的に使って、国、厚生労働省や議員さんに働きかけて政策的な公的資金をマラリア対策に提供してもらう活動の方に力を入れています。僕たちの団体は小さくて、年間の活動費用を考えると、そんなに多くの活動をできていないけれども、日本で何とか費用を集めて、やはり今後、現地でもっと活動を行っていきたいと考えています。

Q. 最後に、学生に向けてなにかメッセージはありますか?

まずこういった感染症などの社会問題に興味を持ってもらえるのは、とっても嬉しいです。普通の勉強では、興味を持つきっかけがまず無いですよね。最近では、以前に比べると関心を持つ機会は増えてきていますが、そもそもこういう領域は勉強しても就職に役にたたない、お金になるものではないですからね。でも僕が思うのは、ただお金儲けも大事だけれども、歳を取って自分のキャリアを振り返ったときに、「本当に自分は社会の役に立ってきたのか、社会の役に立っているのか?」と心に穴が開くことがあるということです。もちろんお金があることは大切ですが、家族に愛されているのか、ということや、世の中の役に立っているのかということとのバランスがとれていることも大切なんじゃないかな。

およそ1時間の取材を終えて、私たちが感じたことは、「水野さんはなんていい人なんだ!」という衝撃でした。私たちが初めてのインタビューで不手際が多かったなか、水野さんは、持っているありとあらゆる知識や経験を惜しみなく語って下さり、本当にありがたかったです。この記事には載せてはいませんが、マイクロファイナンスの話や、NPO団体の運営の実情についての話など、教科書では学べない多く収穫がありました。お忙しいなか、お時間をくださったことをゼミ員一同心から感謝しております。

水野さんのマラリアへの取り組み、住友化学での経験や、挑戦し続ける現在の思いについて語っている一冊です。生き生きと仕事に取り組んでいらっしゃる姿が興味深く、本当にすらすらと読めてしまいました。現地の労働者とのコミュニケーションの取り方や、財形貯蓄を導入など、昔も今も水野さんは思いやりがあってアイディア豊富なんだなぁと個人的に感心しました。

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