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3-5 コーヒー畑でのインターン

ここは、タイとミャンマーの国境の都市。私たちが行ったときは、屋台や出店で賑わっていましたが、なんとこの次の日には、この周辺一帯は、大洪水になりました。川の水は溢れかえり、車も通れない状態です。一日で収まったそうですが、タイの治水問題が現在進行形の重大な経済活動の弊害であることが感じられました。

タイの雨季は、4月から10月。

干ばつや砂漠化によって農作物が育たない、人々の生活が安定しない、というようなニュースを聞くことが多いですが、タイでは、雨が降りすぎることが、大きな被害をもたらしています。

ドイトゥンでも、夜中激しい雨が降り続く日々が続きました。

どうやって、雨による被害を減らし、安定した収入を確保していくか。その現場に立ち会ってきました。インターンというべきなのか…ただただ邪魔をしに行っただけなのではないかと怖いのですが、少しだけドイトゥン・コーヒー・プロジェクトに関わってきました。コーヒー・プロジェクトということで、もちろん、川島良彰さん(前回インタビュー)が登場です。

12.将来のリーダーを育てる

私がお邪魔してきたのは、ドイトゥン・コーヒー・プロジェクトの中の、エクステンション・グループの活動です。エクステンション・グループは、ドイトゥン地域の6個の少数民族の代表がそれぞれ集められ、週1、週2単位で集まってコーヒー栽培のノウハウを学ぶ活動です。およそ25人くらいで、30代前半の男性のグループです。年間スケジュールに沿って活動をしているのですが、みな積極的で、楽しそうに学んでいました。

私が参加したときは、ちょうど苗の接ぎ木?をしていました。スライドにしました。

13.水害を減ら

三枚の写真をご覧ください。

これが、タイの雨季の雨の強さです。コーヒー畑をすさまじい勢いで流れていく水と、道路をふさぐ土砂。

いかにしてこの被害を少なくしていくか。小さな凹みに水は溜まり、一気に流れを作ってしまいます。つまり、分散がカギを握るということです。

こちらが川島さんが作ったドイトゥンの畑です。

「木は斜面で育つけれども、人は斜面で作業ができない」という考えのもと、

 ・等高線に沿ってぴったり高さがそろっている

 ・サービスロードという人が作業するための道を先に作り、斜面に木を植えている

 ・クワで作業ができるようにする。機械でやると、表土を失い、栄養を失う。

 ・階段も等間隔

 ・階段の近くには水が流れる道を作り、階段の各段にも、くぼみを作って水の流れを和らげている

 ・棒ごとに品種が変わる

 ・マメ科の植物で周囲を覆い、表土流出を防ぎ、水の流れを和らげる。グランドカバーという。

などなど、様々な工夫をしています。

一方、現地の博士が主体となって作った畑はこちら。

一見すると、なにも変わりがないように見えますが…

こちらは、木が植えてあるところが平地で、人が作業するところが斜面になっています。さっきの逆なんです。

今は低いので大丈夫ですが、そのうち収穫がとても大変になるそうです。そして、この場合はとても土を動かすので、肥料をたくさん含んだ表土を失いやすいそうです。

また、この畑は、病気が蔓延しがちだそうで、点滴を打っていました。

ドイトゥンのコーヒーは農薬を使わないので、バイオロジカルコントロールを重視しています。

左のトラップは、エタノールのにおいに誘われた虫を、この赤いウォータープルーフの糊付けされた板にくっつける装置です。右は一般的なトラップですが、左のように、改良を進めています。

続いての畑はこちら。

エクステンションメンバーが作った畑です。

何を深刻に話し込んでいるのかというと…

本来は先に作らなければいけない「階段づくり」を後回しにした結果、階段を作るには、コーヒーの木を除去しないといけない&階段がまっすぐにならない、という問題が発生したのです。

難しいですね。とくに、エクステンション・グループの場合は、何度も川島さんから畑の作り方を教わったのに…と私は残念に思ってしまいました。が、川島さんは、「いいんだよ、失敗して。こうやって覚えていくんだよ。彼らはね、今は試行錯誤しているけど、自分の村に帰って技術を紹介してるときは、すごく堂々としているんだよ!」と笑いながら話してくれました。

しかし、どんなに工夫を凝らしても、雨は容赦はしません。

何か所か、土砂が流れてダメになってしまったコーヒーの木を目の当たりにしました。

それでも生きていくためには、山の斜面に畑を作るしかありません。

土砂が流れ込んできた先を探すべく、上へ上へ。

水をキャッチし、コーヒーの木に被害が出ないように、代わりとなる水の道を作ってあげます。

道路のわずかな傾きでさえも命取りになってしまいます。

この日は、政府の交通局に電話して、道路の傾きを治してもらうように交渉していました。

あちこちで、このような被害があるため、解決方法もさまざま。流れを遅くし、水を分散させるにはどうしたいいか。ここに流れてこないようにするには、どうしたいいのか。常に、現地のスタッフとエクステンションのメンバーと川島さんによるディスカッションが行われていました。

エクステンションのメンバーたちは、ここで学んだことを自分の村に伝えに行きます。そして、周囲の国々も、ここで「型」を学びます。ドイトゥン・コーヒー全体が、大きなトレーニングセンターとなっていくのです。

ドイトゥン・コーヒーは無印や、東京大学のカフェで飲むことができます。

ちょうど私と入れ違いで、東京大学のチームと、慶応大学の三島研究会がドイトゥンに訪れていましいた。

14.終わり

ドイトゥン・プロジェクトのリーダーをしてるクンチャイ殿下(ディスナダ・ディッサクン事務局長)が大切にしているモットーは…

「IT CAN BE DONE」

クンチャイ殿下の前で言ったことは、どんな小さなことでも実現されます。このように書くと大きな話のように思えますが笑、たとえば、「アカ族が使っていた傘が欲しかったけどどこのお店もなくてね~」 なんて夕飯の時に話していたら、夕飯が終わってご挨拶をしたときに、「はい、どうぞ」とその傘を渡してきたり…!!!他にも、ミャンマーの視察団の方々へのおもてなしの数々は脱帽そのものでした。

クンチャイ殿下が私たちに話してくれたたくさんのお話の中で印象的だったのがこちら。

・困っている人々と同じ目線になること。口を動かすのではなく、手と足を動かすこと。自分を捨てること。

・「なぜ」を問い詰めること。きちんとした「考え」から生まれた行動は、後々結果がついてくる。

・ここで学んだことをまるっきり真似してはいけない。核を理解し、自分の地域に適す形で活かしなさい。

・奪うのではなく、与えること。タイは中進国で、自分たちの貧しい時代を覚えているからこそ、他国への支援ができる。

クンチャイ殿下は「Simple, Practical, Logical」を唱えながら、いつもパワフルに仕事をしていました。自分の人生を捧げて仕事をする彼のもとで働く人も、みなさん目まぐるしく仕事をしていました。

私が一番素敵だな、と思った女性の1人が、アースさん。彼女は、実際に人々が自立していくためのオペレーションセンターのセンター長というのでしょうか、とても偉い人なのですが、若くてチャーミングな方でした。そんな彼女が、何度も何度も話していたのが、

「最初私たちが貧しい地域に乗り込んでいったところで、なにもできない。お金に困っている、なんて誰も相談してこないし。だから、とにかく結果を出さないといけない。結果が出ることを証明しないと、そもそも信頼してもらえない。」

自分は10年後に、こんなふうになれるのだろうか…と思うくらい、まぶしくて素敵な人ばかりでした。

現在進行形の開発プロジェクトにお邪魔することができたのは、本当に良い経験になりました。

国際協力や開発の分野では、援助資金不足を叫ばれることが多いですが、ドイトゥン開発プロジェクトは、タイの王室が主催するだけあり、その問題はありません。その点で特殊といえば特殊ですが、なにが正攻法か分からない世の中で、自分の国のために結果を残してきたドイトゥン開発プロジェクトは、本当に珍しく、素晴らしいです。東南アジアというだけあり、日本の援助機関や企業、伝統技術などが何度も登場してきたのが恥ずかしさ半分、うれしさ半分でした。先進国の援助のありかたも考えないといけないと思いました。

最後の最後に、撮りためた食べ物の写真を放出します!笑

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