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2-2 生産者と消費者にとって「フェア」なトレードとは (ミカフェート 川島良彰氏インタビュー)

ミカフェートの川島良彰さんへのインタビュー企画、第2弾。今回のテーマは「フェアトレード」です。※かなり長い内容になっています。

フェアトレードに、エシカルファッション…買い物を通して、世界の貧困問題に貢献しようとする取り組みはトレンドとなってきた現在。こうした欧米発祥のトレンドは、日本では近年やっと浸透してきたような気がします。ですが、欧米では、こうした議論はすでに円熟期を迎えています。特に、フェアトレードに関しては、以前よりも熱狂的な酔心者が減り、懐疑派が増えてきたそうです。現地での活動はもちろん、有識者との意見交換などを通して、川島さんが目にした「フェアトレードの現状」について、お話を伺いました。

3.フェアトレードとはなにか。

その前に…フェアトレード・コーヒーについて簡単におさらいしましょう!

簡単に言うと、私たちが飲む一杯のコーヒーに含まれる「生産農家が受け取る金額」を増やすための取り組みです。生産者からコーヒーを買い取る際の価格を、国際市場取引価格よりも高い①フェアトレード最低価格に設定し、さらに②プレミアム金額も上乗せします。プレミアム金額は、生産者による農業組合が、教育や公衆衛生などに投資するための資金に使われます。したがって、消費者が、フェアトレード認証の商品を買うだけで、生産者の生活水準向上に貢献できるというモデルを謳ったものなのです。

なるほどなるほど。では、最低価格やプレミアムが設定されているということは、私たちの手元に届くころには、お値段もそこそこついているのではないでしょうか?

実際に、日本でフェアトレードコーヒーを扱っている大手小売店の、「フェアトレード商品」と「一般のコーヒー商品」に価格を比較してみました。

<参照>フェアトレード商品の価格は、他の商品に比べて本当に高いのか。

すると、 値段の高低ははっきりいうと、関係が見出せませんでした…が、それよりも、驚くことがありました!!2010年以前はフェアトレード認証の商品を積極的に取り扱っていた企業が、現在はフェアトレード認証の商品を販売していない例があるのです。本当に、フェアトレード認証の商品って、増え続けているのでしょうか?特に、無印の動向は気になりますね。

このことについて川島さんが説明して下ささったので、簡単に紹介します。

実は、この転機となったのが…2011年。フェアトレード懐疑派を増やした大きな事件が2011年にありました。それは、コーヒーの国際市場価格の暴騰です。

(参照:http://www.fairtrade-jp.org/news/000168.html)(画像の数値は任意 です。)

生産者と消費者が果たしてフェアなのか、という問題定義を起こしたこの事件。

例えば、業者Aと小農家Bが、1キロ162セントという5年契約を行ったとします。その後、どんなに国際価格が下がったとしても、契約業者は倍の値段を払って、小農家からコーヒーを買い取っていました。…が、ある時、国際価格が暴騰し、1キロ2ドルまで高騰しました。そのとき、生産者である小農家はどういう行動に出るでしょうか?今までの恩を大切にして、国際価格より低くても、契約業者に売るでしょうか?

実際の答えは、NOでした。あちこちで契約の踏み倒し、つまり、生産者による裏切りが発生しました。それによって、契約業者は仕入れが困難になりました。

…では、契約業者は、生産者に、臨時策として2ドル以上の価格を提示すればよかったのではないか、と考える人がいるかもしれませんね。ですが、業者Aは、162セントで買う前提でお客さんにアナウンスをし、損をしないような構造を作ってしまっています。それでも、「2ドル以上を払って買ってあげようじゃないか。貧しい人だからしょうがないじゃないか。」という声もあるでしょう。そして、ドタバタ劇のなか、実際にフェアトレード協会がとった行動は、フェアトレードの根底を揺るがす、本末転倒な呼びかけでした。その後も混乱が続きます。

 

前置きがとっても長くなってしまいました…。確かに、1度の先読みの誤算で、反旗を翻すのはどうか、と思う方もいらっしゃるかと思います。しかし、問題が表面化したのには、必ず原因があります。フェアトレードに欠けていたのは、一体どんな問題だったのでしょうか。

あくまで、「今の問題点をちゃんと改善すれば、いい認証になる」という前提のもと、川島さんにフェアトレードについて語ってもらいました。

4.貧しさの対価から、美味しさの対価へ

Q. フェアトレードのコーヒーって…おいしいですか?

美味しいか、美味しくないか、でいうなら、美味しくないよ(笑)。だって、フェアトレードは美味しさを売りにしていないから。美味しかったら、もっと売れるよ!!!

フェアトレード自身、大げさに言うなら、消費者が上から目線じゃない?「貧しい人から買ってあげましょう」って。だから、品質がどうでもよくなってしまう。

僕が考えるのは、「え!?こんなおいしいコーヒーを作ったのは、あんな貧しい人たちなんだ!!」っていうリアクション。「だったらもっと買ってあげよう!」って気持ちになるじゃん。「うわぁ。まずいコーヒーだけど、貧しい人たちが作ったから、我慢して飲もう…」っていうんじゃ、真のリピーターなんて生まれるはずがない。やっぱり品質。いいものを作ることを教えてあげることが大切だと思う。

Q.消費者が持つ、「フェア」という意識に問題があるということですか?

商品に優劣をつけるのは当たり前。君たちだって自分のお金で払うなら、10個並んでたら、その中で一番いいものを買うでしょ。それが、当たり前。だからこそ、作る人はもっといいモノを作ろう、高く売れるものを作ろうって思うんだ。フェアトレードの一番の問題は、「みんな平等です」という出発点で、どれが一番良い品質か、ではないこと。

コーヒーのことをさらに言うなら、フェアトレード認証の生産者は小農家でないといけない。つまり、労働者を雇うとだめ。家族経営の農園じゃなきゃだめ。大規模経営はだめ。…そういう問題なのかな?

それよりかは僕は、産地に行って、志の高い生産者に指導をして、おいしいコーヒーの作り方を教える。そしてコーヒーがおいしくなったら、それを品質に見合った価格で買う。NYの相場に左右されない、品質に合った価格でね。それを日本のマーケットで販売する。

作ったコーヒーの品質に見合うような価格で売ってあげることが重要だよね。僕はその方がずっとフェアだと思うよ。やっぱり「良いもの」を作って、貧乏から脱出しないといけないでしょ。

Q.貧困脱出のカギは、「良いもの」を作ること、なんですね?

僕が思う国際協力っていうのは、「貧しい人たちにお魚をやってはいけない、施しをしてはいけない。」という考え。つまり、魚を与えるより、魚の釣り方を教えてあげないといけない。そしたら、魚を食べて家族は飢えをしのぐことができる。けど、それでもダメなんだよ。次に、釣った魚のさばき方を教えてあげないといけない。そうしたら、付加価値がついて、売れるでしょ。つまり、現金が入ってくる。ただ飢えをしのぐだけではなく、自立する方法を教える。それが本来の国際協力だと思う。

例えばコーヒー生産者なら、どうやって日本で売れるようなコーヒーを作るか、とかね。豆の大きさとか、粒を揃えた方がいいのか、などを教えて、高く売れるようにサポートする。そういうサポートをしてあげて、なおかつ市場を作ってあげることが重要。というのは、彼らは日本の市場を作れないからね!

4.消費者の権利を守りながら、生産者と地球を守る

Q.フェアトレードの他に、なにか注目している「認証」はありますか?

レインフォレスト・アライアンスっていうカエルのマークの認証があります。熱帯雨林がなくなると、まっさきにカエルがいなくなってしまう、ということでカエルのマークが目印になっています。認証にお金がかかるのですが、その分、農園の労働者の住居、教育、医療、環境への配慮などの要求水準がとても高いです。フェアトレードは小農家を扱っていますが、実際は大農園で働く労働者の方が数は圧倒的に多いんです。彼らは、土地もない日雇い。そういった労働者たちの生活環境をよくし、自立するためにサポートしようというのは素晴らしいことだと思います。

<画像>コーヒー豆の袋に描かれているカエルのマーク

More details: http://www.rainforest-alliance.org/lang/ja/about/marks/rainforest-alliance-certified-seal

参考URL: http://www.rainforest-alliance.org/lang/ja/work/agriculture/coffee/story-in-your-cup-infographic

5.終わりに

フェアトレードを経済学で扱うのはとても難しいので、このテーマはかなり苦戦しました。どこが難しいのかというと…

①生産者と業者の間に協会が入り、価格設定などを行う→需要と供給、マーケットを捻じ曲げる

②品質の差といったものによる付加価値等が考慮されていない。

③人件費の安さは、労働集約型において強み。今後の発展の機会を奪い、発展段階モデルを逆行している。

④消費+非金銭的な満足感(生産者の効用が自分の効用関数)という形は完全なのか?価格+所得と非金銭的ななにかを加えるべき。

⑤最低価格以上を維持するために、体力のある企業のみ参加できる

⑥貧困削減に役立っているのか、行動経済学に合うのかなど証明されていない

ゼミでの30分足らずの話し合いですらこんなに問題が出ました。皆さんはどうお考えですか?

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