top of page

2-4 携帯電話が途上国にもたらしたものとは?(ミカフェート 川島良彰氏インタビュー)

川島さんへのインタビュー企画、最後のテーマはテイストを少し変えて、「途上国と携帯電話」です。一見コーヒーと関係が無いように思えますが、実は開発経済の研究分野では、携帯電話はホットな話題なんです。例えば、「携帯電話によって、農民が市場価格をモニターすることができるようになり、より高い値段で生産物を売ることが可能になった」という論文などがあります。

<画像>1時間にわたってユーモアあふれるトークを繰り広げてくださいました。

そんな携帯電話ですが、総務省のまとめによると、アフリカ全体での人口普及率は2014年末でなんと84.7%!これは、2003年末の8.6%と比較すると約10倍に成長しています。

私たちは三田祭論文で、途上国とITについて取り扱おうと考えていました。なので、途上国の農民の様子を知る川島さんにも、携帯電話の印象について伺ってきました!

8.市場へのアクセス

私たちは論文などを通して、「ラジオ・携帯電話を保有→市場価格を知る→より高価格で商品が売れる→所得向上」というサイクルについて学びました。これらは、本当に成り立つのでしょうか。

Q.市場に関する情報へのアクセスによって、品質の差や、所得に差が生まれることってあるんですか?

1980年代のインドネシアでの不思議な体験を話してあげるよ。

当時は、携帯電話がたくさんは普及していなくて、農民たちは英語も喋れないような時代。僕はインドネシアのジャワ島の山の中で、小農家の人たち十数人と一緒に歩いていたんだ。突然、ある時間になったら、全員が小さなラジオを取り出して、みんなラジオを聞き出して!話してる最中に突然聞き出したからさ!すごいビックリして、何かと思ったら、…BBC放送を聞いていたんだよ。詳しく言うなら、BBC放送のロブスタ種※の市場価格の放送を聞いていたんだ。

農民たちが気になったのは、その日のロブスタ種の価格。もしそこで価格が上がっていたら、自分のストックを売りに出す。もし下がっていたら、もう少し待って、相場を見るわけ。

でもその、弊害もあるわけですよ。もちろん、市場価格へのアクセスが可能になることで、高価格で売ることができる。これは良いことです。しかし、コーヒーは「生もの」なので、置いておくとどんどん劣化してしまう!ロブスタ種の場合は、ブレンドとかインスタントコーヒーに使うからいいんだけど、アラビカ種の場合は、3か月も4か月も、農民のところで温度管理もちゃんとせずにおいていたら劣化してしまう!

なので、よく言うのは、価格が暴落しても品質が下がる。で、価格が高騰しても品質が下がる(笑)。前者は、生産者が肥料を買うお金がなくなって、肥料を与えなくなるし、病虫害が出ても、農薬をまけないから、どんどん生産性も質も下がってくる。暴落すると品質が下がってしまうんだ。そして後者は、さっき話したように、ずっと持っておいたら品質が下がるということ。まあ、「いつか、いつか売りに出そう。明日はもっと高くなる」と思っていたら…大暴落するんだけどさ!皮肉な話だけどさ(笑)。

これは、1980年代のラジオの話だけど、日本よりもいまだにラジオは聞いてるよね。

9.働く選択肢と情報ネットワーク

Q. 携帯電話がもたらしたものって何だと思いますか?

携帯が普及して、やっぱりすごい世の中変わったって思うよ。固定電話よりも、携帯の方がコストがかかんないでしょ。70年代80年代は、中南米やアフリカ行ったら、労働者は絶対に携帯電話は持っていなかったもん。固定電話も。携帯といっても、シンプルなものだよ。天気予報を見たりするような機能はまだ少ないけれど、送金サービスとかはすごく流行っているよね。固定電話では、絶対できないこと。まず普及しなかったし、コストがかかるから。

最近だと、エチオピアに行ったときの、コーヒー工場のオーナーの話が印象的だったね。彼はどちらかというと、昔のタイプのコーヒーオーナー。「最近、豆を選定する女性労働者(一番下のクラスの労働者)が集まらなくて困っている」って言っていた。何でだと思う?

<図>豆の選定の様子

携帯電話が普及して、いろんな職業の選択肢が増えたんだ。例えば、隣の工場は時給いくらだよ、とか、あそこの方が給料が高いよ、という情報が頻繁にやり取りされるようになった。あとは、いろんな学校ができたことで、女の子が秘書の学校に行けば、卒業後に給料が高くなるという情報とか。

つまり、コミュニケーションツールが増えたことで、仕事に関するさまざまな情報が入ってくるようになり、単純労働をする人が集まらなくなった。そのコーヒーオーナーは、「あの子たちはうちの工場にきて、一生、豆を選定するのが一番幸せな人生だ」って言ってたけどね(笑)。まぁ、今大変だよ、雇い主にとっては悪い面かもしれない、人が集まらなくて。でも、携帯電話の普及はすごくいいことだと言えるよね。

10.まとめ

開発経済を学び、そのなかで農業、コーヒー産業へ関心が深くなっていった私たちとは「逆の目線」でいらっしゃる川島さんにお話を聞けたのはとても良い機会になりました。コーヒー産業から世界を見つめ、援助とは何か、平等な機会とは何か、を考えるヒントをたくさんいただきました。何より、いただいたコーヒーがとても美味しかった…というのと、お仕事への熱意を感じることができました。貴重なお時間をいただきありがとうございました。

…さらに番外編ですが、「生活に不便な土地ほどアイディアが生まれる」という話もしてくださいました。

中南米の「minuto(ミヌート)」というビジネス(?)は、一見すると、道端、日傘の下で女性が小さな机の上に携帯を4台ほど並べて、ぼーっとしている。が、実は、minutoとは「1minute」という意味で、友達に電話をしたいけれど、携帯がない場合はもちろん、かけたい相手とは異なる通話会社の携帯を使っている場合に、携帯を貸し出してくれるため便利であるそうだ。同じ通話会社の携帯を選んで、1分あたりいくらという計算で安く通話することができる。日本でいうなら、auユーザーに電話したいdocomoユーザーが、ミヌートでauの携帯を借りて電話をするようなものである。他に、全く違う例として、アフリカの山奥にある、普通の民家による映画館の話もしてくださいました。

RECENT POSTS:
SEARCH BY TAGS:
bottom of page