感染症研究の促進に必要な取り組みとは? ―水野達男氏インタビュー①―
- 2017年8月24日
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私たちにとって初めてのインタビュー企画では、Malaria No More Japan(マラリア・ノーモア・ジャパン)専務理事の水野達男さんにお話を伺ってきました。Malaria No More Japanは、日本初のマラリア専門NPOであり、「マラリアのない世界」を目指して国内外で取り組みを行ってきた団体です。ここでは、第3回に分けて、水野さんへのインタビュー・レポートを掲載していきます。
第1回は「マラリアと医療の技術革新」をテーマにまとめました。


1.マラリアとは何か
「ちんぷんかんぷんなことを聞いても構わないよ、みなさんは学生だからね」という優しい水野さんのお言葉に甘えて…。そもそもマラリアって、ということから、支援の形についてまで、お話を伺いました。
Q.マラリアについて教えてください。
感染症はたくさんありますが、世界の三大感染症って何かわかりますか? …エイズ・結核・マラリアです。マラリアは、予防法も治療法もあるので、いわゆる不治の病ではありません。では、何が問題なのかといいますと、感染が起こっている国がアフリカや新興国などの、経済的に恵まれていないところであるということです。つまり、予防や治療のための物資が届かない、適切な診断が受けられない、そして適切な治療薬が処方されない。その結果多くの人が亡くなっています。
また、マラリアは“蚊”が媒介している感染症(病原体が人の体に感染して伝播していく病気)です。“蚊”が運ぶマラリア原虫は、エボラやデング熱といった多くのウイルスに比べて、やっつけるのが難しいんです。なぜなら、病原虫が体の中に入っていって、体中の血液を巡って住みついてしまうから。
More details: http : //www.mnmj.asia/malaria.html
Q.では、マラリア撲滅支援のなかで、何が一番効果的なのですか?
残念ながら、マラリアには未だにワクチンが開発されていません。一般的な病気にはワクチンがありますが、マラリアにはないため、感染経路を断つことが重要です。つまり、蚊を発生させない・蚊を人間に近づけないようにするしかないのです。特に、マラリアを媒介する蚊は、「ハマダラカ」という種類の蚊で、夜しか活動しない。(ちなみに、デング熱やジカ熱は「ヒトスジシマカ」といって人間の活動時間と同じ、昼に飛ぶ蚊なんですよ。)だから、マラリアに関して一番効果的な予防策は、寝るときに蚊帳の中で寝るということ。殺虫剤付きの蚊帳を張って、人間の血を吸うために近づいてきた蚊が、ネットに触れて死ぬというのが、人間がおとりになって蚊を殺す最も合理的な方法です。

<写真・左から2番目>住友化学が製造している殺虫剤付きの蚊帳。10$。現地の人々による転売防止のために、包装袋を開けて渡すこともあったそうです。
Q.感染してしまったらどうなるのですか?
一度罹ってしまったら、今度は診断と治療がカギになります。感染者の血を顕微鏡で見るとマラリア原虫が確認できます。原虫には4種類あり、それぞれ種類ごとに治療方法も異なります。なので、診断が大切なのですが、アフリカには顕微鏡はあっても判別できる人が少ないため、誤診率がなんと4割!…そこで有効なのが、「敏速診断キット: Rapid Diagnosis Kit」という病原虫の種類を判別するキットです。「ACT:Artemisinin Combination Therapy」という治療薬と共に現地に届けることが大切です。

<写真・左>指先の血液と試薬を入れると浮き上がるラインをもとに病原中の種類を判断する。60セント(約60円)
<写真・右>三日続けて飲み続ければ治るそうです。40セント(約40円)

2.技術開発と普及のトレードオフ
マラリアのみならず、さまざまな感染症や疾患において、治療薬とワクチンの開発にはジレンマがあります。とくに途上国のための医療技術開発となると、企業側にとって利益が見込めないため、新技術の開発が遅れがちになってしまいます。企業側の開発インセンティブを高く保ちつつ、病気に苦しむ人々に医療技術を普及させるための取り組みとしては、特許制度や補助金制度などが存在していますが、国際社会による有効な制度設計が求められています。

Q.研究開発と普及を促進するために、水野さんご自身が大切だとお考えになっていることは何ですか?現在はどのような取り組みが日本で行われているのですか?
まず、企業は社会的な責任を果たすという観点において、たとえ儲からない分野であっても、そこに最小限の研究開発投資をするという姿勢は必要です。製薬会社などには、研究開発を行うインセンティブがないことは事実なので、研究開発を公的機関が支援し、促進するような仕組みを作り出すことが大切だと考えています。日本でも、2013年に、GHIT基金というファンドがスタートしました。医療会社や公的機関のほかに、マラリアに関する技術はなくても支援には名乗り上げる会社らによる官・民・市民連携で、それをゲイツ財団が支援するという仕組みができています。コアになる技術を持つ医療会社に資金を提供し、国際保健としての開発のインセンティブを高めようとする仕組みです。
More details: https://ghitfund.org/general/top/jp
今度は、出来上がったものをどうやって普及させるかという問題です。2002年に三大感染症に関するグローバルファンドという新規の組織ができ、多くの資金を集めて効果的に途上国に支援を行っています。つまり、現段階で流れとしては、研究開発のため・出来上がった技術を普及させるための2つのスキームがあるということです。
More details :http://fgfj.jcie.or.jp/


Malaria No More Japanでは、蚊が運ぶ病気を考える講座などを通してさまざまに知識や情報を発信していています。

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